おん、だいた
水曜日, 21 12月 2022
あの山が、人にとっての風景なのではなく、自然にとってのひとつの出来事なのだとする感性があったのなら、きっと、それは全体としてありありと見えるのだろう
ただ、現代人である今の私には、それがどうしても見えない
それでも、山と山とのあいだにそれが座していることが体感としてわかるのだから、センサーとしての私の身体は、そんなに鈍いものではないのかもしれない
なんなら、だいたら、いいのよ
だって、
あなたもわたしも
あったものではないのだから
そう言ってくれているのが、私に、聴こえる
いや、私は、そう聴こえたふりをしている
だいたら、だいた
おん、だいた
互いにだいたら、あなたもわたし
どのみちひとり
だいたら ぼっち
暴力的にも、そんなふりをして
わたしは、垂直的な時間の中で
あなたを、とっぷり、抱いている
しかし、感じてみるとその熱量は、わたしにとってはあまりにも膨大すぎて御(ぎょ)しがたく
恐れをなしたわたしの一部が、それを名前として閉じてしまう
敬意を評して「おん(御)だいた(代田)」
そして、それは大きく捉えれば間違った行為ではなかったのだろう、と、我に返った、私は、そう思う
場を開きっぱなしにする癖のある私に「閉じるのも優しさだよ」と言ってくれたのはSさんだった
またいつの日か暴れるその日まで
せめてそれまでどうか健やかで
山あいのあいまに、ごろねん、ねんね
静かに、静かに、おねむりなさい
いつかまた暴れられる、その日まで